粉もん最高⁈ インドネシアでたこ焼き屋が増えるワケ

たこ焼きがファストフードに

前回、ジョグジャカルタ王室がたこ焼きビジネスに携わっているということをお伝えしました。

実はインドネシアでは、たこ焼きが定番のファストフードとなりつつあります。

もっとも、日本料理が海外で人気を博すことは珍しくありません。ですが通常は、日系の飲食関連企業が営業戦略としてそのブームを発生させています。ところがたこ焼きの場合は、どうやら地場系企業が自発的にたこ焼きビジネスを興し、積極的にフランチャイズ加盟店舗の増加を目指しているとのこと。

たこ焼きは今や日本を離れ、異国の地で大きな利益を生み出す商品となりつつあるのです。

今回はインドネシアで花開いたたこ焼き産業について考えます。

簡単に始められるビジネス

たこ焼きという料理は、専用の道具さえあれば割と簡単に作れるものです。

蛸という世界中どこにでもいる海洋生物と小麦粉、玉子、輸入品のソースがあればとりあえずは形になります。何よりも食用油の使用を極少量に抑えられる点が、大幅なコストダウンにつながります。

ですからフランチャイズを募る側も、初期投資の安さを前面に押し出しています。

Oishii Takoのページ。初期投資の安さを強調し、フランチャイズ加盟を募っている。

インドネシアでは屋台から発展した「ミニ店舗」をよく見かけますが、たこ焼きはまさにミニ店舗のための商品です。日本でもワゴン営業のたこ焼き屋さんがありますが、インドネシアの市場ではそうした手軽さ、コストパフォーマンスの良さが常に求められているようです。

さて、近年このたこ焼きビジネスで頭角を現しているのが、アジス・ユヌス氏が立ち上げた『Oishii Tako』。たまたまインターネットで知ったたこ焼きに底知れない未来を感じて脱サラし、裸一貫からチェーン展開を始めたアジス氏。今やそのフランチャイズ店舗はジャワ島を飛び出し、何とマルク諸島にもあるそうです。

Oisii Takoの店舗。

チーズやエビなど中身はタコ以外も

Oishii Takoが営業を開始したのは2009年。実はこの年から、インドネシア国内でのGoogle検索キーワード「Takoyaki」が急激に増加しています。この現象がOishii Takoの影響によるものかは不明ですが、いずれにせよインドネシアにとって2009年は「たこ焼き元年」だったようです。



なぜか爆発的に増えている「Takoyaki」での検索数。

やはりサブカルの影響か

しかしいくら販売店にとって手軽な商品でも、消費者がそれを受け入れなければ商売はできません。

そもそも、蛸食というのは世界的に見て珍しい習慣です。日本と朝鮮半島、地中海の一部地域などにその風習があるくらいで、昔から「悪魔の魚」と忌み嫌われてきた蛸を好んで食べることはまさに「ゲテモノ食い」なのです。

ところが、インドネシア人は蛸食をあっさりと受け入れています。

これはやはり、日本のサブカルチャーの影響があるものと思われます。

漫画がもたらす「食の流行」は、決して侮れるものではありません。

例えば牛丼という料理は、80年代半ばまでは「現場作業員の食べ物」という認識でした。牛丼チェーン店の『吉野家』は肉体労働の男性が行くもので、女性や子どもにとっては近寄り難いものがありました。しかし週刊少年ジャンプで『キン肉マン』という漫画が人気を集めると、吉野家の店舗にファミリー客が押し寄せるようになりました。

キン肉マンは漫画でもアニメでも、いつも美味しそうに牛丼を食べていました。彼のその行動が、当時100億円超の債務を抱え破綻寸前だった吉野家を復活させたのは事実です。

そしてそれに近い現象が、インドネシアで起こっていても不思議ではありません。

「このキャラが食べているタコヤキって料理、味は想像できないけどわたしも食べてみたい!」といったように。

考えてみれば、誰しもそのような経験はあるはずです。この漫画を読んであの食べ物が好きになった、という人間のお茶目心は、れっきとしたビジネスの好材料なのです。

少女コミック誌『ちゃお(海外ではCherry)』の表紙。食文化の発展はサブカルチャーがきっかけをもたらすことも。