インドネシア・家庭用ゲーム機事情

ジャカルタ最大級のショッピングモール『グランド・インドネシア』の3A階にベスト電器が入居している。

そのベスト電器の売り場を見て驚いたことがあった。ポータブルゲーム機のPSPの新品が売られているのだ。

SONYのポータブル機といえば、2017年現在の主力はPS Vitaである。いや、それどころかVitaの後継が出るか出ないかと盛り上がっているところだ。にもかかわらず、ジャカルタの高級ショッピングモールの電器店に並んでいるのは一世代前のPSPなのだ。

要するに、「安い旧世代機」には一定以上の需要があるということである。

旧世代機が主力

家庭用据え置きゲーム機に関して言えば、インドネシアでは今もPS2が頑張っている。

現地には旧世代機の修理を請け負うメーカー非正規の店がいくつもあり、そこではソフト販売も行っている。ただしこれは、殆どが海賊版だが。

現行主力機のPS4は「高嶺の花」というもので、庶民にとってはどんなに奮発してもPS3がせいぜいといったところか。もっともこれは、単に本体価格の問題だけではないと筆者は見ている。そもそもテレビゲームというものは、「新しければ新しいほどいい」というわけでもない。新しく発売されたハードの真髄をソフト制作会社が理解しないまま、クオリティの低いゲームばかりが量産されてしまったということはよくある。

ならば、古くても名作と呼ばれるソフトで長く遊んでいたいと考える層が現れるのは当然だ。日本人が今でも1985年発売の『スーパーマリオブラザーズ』を楽しんでいるのと、仕組みは同じだ。

サッカーとコンピューターゲーム

ただしインドネシア人の場合は、日本人とはソフトの好みがまた違うようだ。

インドネシアでは、ストーリー性のあるソフトはあまり好まれないと聞く。これはインドネシア語にローカライズされているソフトが多くないというのが理由らしい。逆に文字を追う必要のない内容のもの、とくにサッカーのゲームは不動の人気を誇っているそうだ。

サッカーの動きなら、PS2の性能で充分に表現できる。

もともと、コンピューターゲームにとってサッカーはひとつの「壁」のようなものだった。何しろ、フィールドにいる22人がそれぞれバラバラに動くのだ。初代ファミコンほどの性能では、それをすべて再現することはできない。

しかも「オフサイドの再現」は、長らくソフト制作会社を悩ませていた。CPUの性能が確立されていない以上、下手にオフサイドを加えるとゲームバランスが崩れるからだ。

だがそれらの憂いは、家庭用ゲーム機の主力がスーパーファミコンからPS1に移行するあたりで一気に解消されていった。90年代後半には「オフサイドのないサッカーゲーム」というものはほぼなくなり、より戦略的なプレイを楽しめるようになったのだ。

言い換えれば、「最新の実名選手がいない」ということに目を瞑ればPS2のソフトでも充分に楽しめるということだ。

「文字のいらないゲーム」が人気

そしてサッカーよりもさらに動きが単純で、かつ興奮を得られやすいのが横スクロールの格闘ゲームだ。

このジャンルは、サッカーよりも操作方法の確立が早い。しかも発売当時に大きな人気を得たタイトルは、その後も長く遊ばれている。現地のゲームセンターでも、日本から有名タイトルの基盤を筐体ごと輸入して稼働させるということがよくある。もちろん、言語ローカライズなどされていない。

このように、コンピューターゲームからインドネシア市民の側面を観察することもできるのだ。ただし、地場開発が容易なアプリゲームはこの限りではない。