「健康促進都市」に向かうジャカルタ


※画像はJakarta berlariのスクリーンショット

筆者がグラップリングというスポーツと出会ったのは、高校生の頃。当時は桜庭和志選手がグレイシー一族を次々に撃破していた。その影響で、寝技格闘技の第一人者である梶泰章先生の道場に通い出したのだ。

もっとも、当時は「グラップリング」などという名前はまだない。打撃抜きの競技は単に「寝技」と呼んでいて、木口道場が整備したルールで行うものは「コンバットレスリング」と言った。要するに、寝技格闘技が競技として一本化されていなかったのだ。

もちろん、今は違う。グラップリングはマイナー競技だが、それでもひとつの種目として成立している。インドネシアの富裕層がグラップリングの大会に参加していると初めて知った時、筆者は神に感謝したものだ。

なぜ富裕層が寝技格闘技を好むのか、それはグレイシー柔術の歴史を解説する必要がある。そのあたりは、また後日。ここでは「格闘技はジム通いを必要とする競技」であること、そして「少し前までジム通いができるのは富裕層のみだった」という事実を明記しておきたい。

ジム通いはできないけれど…

ジャカルタ市内の格闘技ジムの月謝は、米ドル換算で大体40ドルが相場である。

1ヶ月40ドル相当の月謝をジムに収めることができる人は、ジャカルタにどれほど存在するのだろうか?

ジャカルタ特別州の2017年最低法定賃金、は、335万ルピアである。これに少し色をつけて、月360万ルピアとしよう。5月30日時点のレートでは、ちょうど270ドルである。

これでは40ドルという数字は、かなりの出血である。エアロビクスやヨガの教室も、最低相場はやはり4~50ドルだと思うから、室内スポーツやフィットネスは「ミドルクラス以上の人々のため」ということになる。

もちろん、それでも日々のワークアウトに金をかけるワーキングクラスの市民は存在する。だが現実問題、月40ドルの出費を一般労働者たちに推奨するのは難しい。

その代わりとして、インドネシア都市部ではジョギングが注目されている。

ジョギングは費用がほとんどかからない。Tシャツと短パンと靴さえあれば、誰にでもできる。しかもその効果は絶大だし、そもそもジョギングは「階級のないフィットネス」だ。プロ格闘家と名もなき労働者が、同じ道を一緒に走っている。

ジョギングで鍛えられるのは下半身。言い換えれば、日常生活に必要な筋肉である。同時に贅肉が日に日に落ちていく。ジョギングは「フィットネスの王様」かもしれない。

サンディ・ウノのランニングシューズ

ここ数年で、ジャカルタでは多くのジョギングイベントが催されるようになった。

たとえば、青いTシャツが特徴の「ジャカルタ・ブルラリ」というキャンペーンがある。これはジョギング普及と地場系スポーツ用品メーカーの物販を兼ねているのだが、その公式サイトを見ると出てくるのはサンディ・ウノ次期ジャカルタ州副知事の画像である。

サンディ・ウノはジョギング愛好家としても有名で、このテのイベントによく出ている。すごいのは、地元シューズメーカー『910』とのコラボでサンディ・ウノ特別モデルのランニングシューズが売られているという点だ。価格は44万9,000ルピア。アディダスやナイキの製品と比較したら、かなり手頃である。

サンディ・ウノはジャカルタマラソンにも出場しているし、体型からしてだいぶ走り込んだランナーだというのが分かる。腹が出ていない、あごが垂れていないという「健康的な政治家」だ。

今後のジャカルタは、この人物を旗手に「健康促進都市」へと舵を切る可能性がある。

スポーツ環境充実へ

当然、この流れは誰にとっても「喜ばしいこと」だ。

とくに注目すべきは、最低法定賃金で生きる市民がワークアウトに目を向けたという点だろう。先述の通り、室内フィットネスは基本的に高い費用をつぎ込まなければできない。すると「身体を動かすために金を使うのか」という風潮が生まれ、健康維持のためのスポーツが定着しなくなる。

今までのジャカルタが、まさにそうだった。だが、これからは違う。この都市のスポーツ環境は、今後もより一層整備されていくだろう。

Jakarta Berlari

Sahabat Sandiaga Uno di Jakarta Berlari-YouTube